「発動 京都の工芸」
土の重量感、圧倒的な存在感
 陶工家 秋山陽さん

 地中から土塊がせり上がったようにも、巨大な土色の生き物がうずくまっているようでもある。秋山陽さんが1年がかりでつくった陶造形「Oscillation(振動)VI」。高さ1・5メートル、幅1・4メートル、長さは実に8メートル余。一昨年夏、宇部市の第19回現代彫刻展に招待された秋山さんは、今までつくった自作の中では最大スケールの作品を発表した。

 ここには陶芸という概念を悠揚と突き抜けた規模の大きさがある。現代彫刻としての出品に違和感もなく、重量感を伴った存在感が圧倒的だ。

 「土を素材にしていますし、焼いてつくっているから陶器だと言われればそうなんですが、ぼく自身は陶芸や彫刻、現代美術…といった既成のジャンル分けには意味はないと思っています」と話す秋山さん。その一方、スケールと合わせて、1センチ四方の細部にもこだわる。焼成の過程で生まれてくる土の表情、手に触って見る感触。マクロとミクロ、遠と近の振幅の中で土の造形のリアリティーが追求される。

 京都市立芸術大陶磁器専攻科を修了。学生時代の恩師で戦後の前衛陶芸のパイオニアだった八木一夫から多くを学んだ。思いどおりになる土の可塑性やコントロールできる焼成を重ねるうちに陶芸への疑問が浮かび、一時は土から離れた時期もある。再び土を素材にした造形表現を始めたのは、土それ自体が主張をもった存在として立ち現れてきた体験だった。

 「たまたまミカンの皮をむいていて、粘土の皮をむけないかなと考えたんです。土の球体をつくり表面をバーナーであぶると、ひび割れができる。表面は固く、内部は柔らかい。同じ土だけど表面と内部で質が全然違う。表面はひび割ればらばらになろうとするが、内部の土は柔らかいから延びてくっついたまま。むけると分かりました」

 この体験以来、秋山さんの土を素材にした表現は、土そのものがもっているエネルギーを現前させながら、自身のイメージを構築する方向へと突き進み、現代陶芸の主要作家となった。

 球や円筒の土の造形の表面をバーナーで焼いてひび割れた状態にし、それを平らに伸ばした「HORAIZON」「準平原」の連作から始まった土の造形は、「地質時代」「振動」といったタイトルが物語るように、土のエネルギーのすごみを、スケール感と焼成による細部のテクスチャーとで表現してきた。

 「Oscillation(振動)VI」の作品は14のパーツから成る。一つのパーツは、粘土をドーナツ状の輪にし、その内側をバーナーで焼いてひび割れさせた後に、それを反転させたものを多い場合は十数個重ね合わせて焼成している。そうした行為の集積と凝集が生んだリアルな造形。

 「ぼくの中には、形を立ち上げる構築作業と、壊す作業とが常に同居している。つくって壊す、壊れたものを組み立てる。自分の手法で、土の主張を自分がどう受け止め、解釈して、自分のものにするか。そんな過程で作品も生き生きしてくるし、自分の新しい興味や感動も持ち込める」

 人がものをつくることの意味の始源、焼きものの悠久の歴史。その根源を見据えながら、秋山さんは、今の時代の可能性を問い続ける。

 写真右=「ある秩序からの移行の過程に生き生きした感じが生まれる」と話す秋山陽さん(右京区大原野のアトリエで)
 写真左=「Oscillation(振動)VI」

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