新旧、多様な魅力
美術館の山荘建築が建った年代、モネがジヴェルニーの庭で睡蓮が咲き柳が映る水面をみつめ光と色彩のめくるめく変化を描き続けていた年代、そして通崎さんが数多く集めた銘仙などのアンティーク着物がさかんつくられた年代、それらに通じ合う「1920年前後」を共通項に、庶民の生活のなかから生まれ、一種の暮らしと心の改善運動であった「民芸」と、普段の暮らしの美にこだわる通崎さんの眼とを結びつける意図だった。 「好みと言えば坐忘斎好みとか、茶の湯の世界ではおなじみですが、そういう好みは私にはおこがましいというか恥ずかしいので、自分のお気に入り、純粋に好きなものを選んで並べる。いわば『見立て』を見てもらうということで思い切りました。自分の好きなものでしか、人でも物でもかかわれませんから」と通崎さん。 趣向ある「花の庭」 以前から交友のある現代美術家にも声をかけた。美術館の山荘建築の方は、モネが色とりどりの花を咲かせ「絵の具箱」と呼んだ「花の庭」に見立てた。会場構成は谷本天志さんが協力。通崎さんの自身のコレクションと、美術館の所蔵品の中から選んだお気に入りの工芸品とを組み合わせた展示など、随所に趣向がある。通崎さんの両親が、大のファンだった画家の須田剋太や小磯良平に頼んで描いてもらった通崎さんの少女時代の晴れ着姿の絵と、そのときの着物が陳列されていたりもする。弘法さんで見つけたという、音符を描いたポップなデザインの羽織の裏地を赤い五線入りの表装にした掛け軸と、現代陶芸家、八木明さんの青白磁の可愛い花入れとを組み合わせた展示もあれば、男物の長襦袢(じゅばん)のたばこやパイプ、マッチの絵柄を生かした「禁煙」掛け軸に黒田辰秋の「彫文様マッチ入れ」とバーナード・リーチの「青磁釉彫絵灰落」を添え並べるなど、取り合わせを面白く見せる。赤と黒、薔薇、飛行機、格子模様などをテーマにした着物や小物、古美術の組み合わせにも、古いものと新しいもの、今の造形や感性とが交響してハーモニーを奏でる。
モネの睡蓮の絵が常設展示されている「地中の宝石箱」の空間は、モネの「水の庭」に見立て、現代美術家の戸矢崎満雄さんが30万個ものボタンのコレクションから数万個を印象派の色彩のタッチのように配置して、水面に広がる波紋のような美しいイリュージョンを公開制作で完成させた。モネの千変万化する光と色彩の世界と呼応するかのような無数のボタンの色と天窓からの光を受けた輝き。 遊びとがんばりと 1920年前後の着物や小物などに散りばめられた時代の色彩、現代のアーティストたちの感性の競演。京菓子司の主人がボタンやタイルをデザインした菓子をつくり、濱田庄司や河井寛次郎の角鉢に盛る展示もあれば、美術館のカフェで実際に試食できるアイデアも、これまた通崎好みの趣向だ。 古いものと新しいものが今の感性や美意識で交差して生み出す遊びと新たな創造への精神。「楽しく遊ぶというニュアンスで展覧会は成り立っています。皆がんばっているけど遊んでいる。でも本当に遊ぼうと思えば、がんばらないと格好良く遊べない」と通崎さん。その緊張感とダイナミズムが美の温故知新を活力にした新しい創造の源になる。=敬称略 <バックナンバー>◆ひとARTALK◆発動 京都の工芸 ◆挑発する美術家たち ◆アート新・古・今 《1》 《3》 《4》 《5》 《6》 《7》 《8》 《9》 《10》 《11》 《12》 《13》 《14》 《15》 《16》 |
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