京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >豊穣の森 芦生
インデックス

1. 目覚め

幹が空洞になっても、なお強い生命力を感じさせるアシウスギ。空洞越しに朝日が輝いた(4月3日、南丹市美山町・芦生研究林)

  降るような陽光が雪を解かす。木々が静かに芽吹きだす。

 西日本有数の原生林が残る南丹市美山町の京都大芦生研究林。冬に閉ざされていた「芦生の森」は今、目覚めの時季(とき)を迎えた。
 4月上旬。尾根に分け入ると、威容を誇る巨木の群れが現れた。芦生の名を冠したアシウスギだ。推定樹齢1千年の木もある。悠久の中で厳しい自然に鍛えられた造形が、その体躯(たいく)に宿る。
 雪の重みで、枝が手のひら様に伸びたり、さまざまな植物が寄生したスギがある。
 雷に打たれたのか、幹に大きな空洞のあるスギも。早朝、この空洞越しに太陽が姿を見せた。冬を堪えた巨樹はつかの間、圧倒的な存在感を放った。
 10日。ふもとの集落で恒例の「わさび祭り」があった。里人たちは、新たな季節に祈りをささげた。
 森に、里に、春が来た。芦生の1年が始まった。
風雪に耐え、手のひらような形に育ったスギが鎮座する。降り出したみぞれがレンズをぬらした(4月3日)
花が咲き、虫たちも動き出した。京都府の絶滅危惧種クロマルハナバチがほころんだキンキマメザクラの花を飛び回っていた(18日)
わさび祭りに集う住民や研究林関係者ら。かつて盛んだったクマ狩り。その無事を祈って正月から祭り当日までワサビを食べずに過ごしたことにちなむ伝統行事だ(4月10日、南丹市美山町・芦生権現社)
林道沿いを彩るイワウチワ(4月9日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
こずえを飛び立つトビ(9日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
タムシバ(18日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
冬枯れの木立に咲くタムシバ(4月13日、高島市朽木・三国峠付近)
アセビ(4月18日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
シジュウカラ(4月18日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
山肌を彩るヤマザクラ(4月18日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
ミヤマカタバミ(4月18日、南丹市美山町・京都大芦生研究林)
 都市近郊にありながら、多様な生態系をとどめる芦生の森。一方で、ナラ類の立ち枯れやシカによる食害、入林者の過剰などの危機も忍び寄る。豊穣(ほうじょう)な自然や里の営み、直面する課題を1年間、カメラで追う。
(写真映像部 山本陽平)

 芦生研究林 滋賀県、福井県に接する約4200ヘクタールの森林で、京都府北部を流れる由良川源流域にある。天然林が約半分を占め、豊富な種類の動植物が生息している。京都大が1921年、地元から99年契約で地上権を借り受けた。
【2010年4月24日掲載】

H22年度関西写真記者協会 企画部門 銀賞受賞作品